語る

備忘録

君の膵臓をたべたいを語る。

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「君の膵臓をたべたい」の映画と原作小説を見ました。

一度しか見てないから曖昧な映画と手元にあるから何度でも読み返せる小説を元に書きます。

深いことはわからないので雰囲気ここが好きみたいに浅くまとめます。

 

 

 

映画

NHK?で偶々やってたのを見ました。

オープニング曲や挿入歌、エンディング曲は合ってないと思いました。本筋とは関係ないのでどうでもいいですが。

 

  • 初めて見たときに思った感想

開幕ヒロインの死が確定してしまったのでどんな過程を辿ってもバッドエンドなんだろうな、と思ってました。

2人の関係は桜良が死ぬことから始まります。山内桜良は大人になる前に死にます。

桜良が膵臓の病気でなければ2人の関係はなかったので2人で進む未来は存在しません。重いですね。

開幕で結果が決まってしまったので「もう見る意味なくない?」と思うくらいには興味がなかったです。

ヒロインが死ぬまでの物語を知ってエンディングが悲しくなってしまうのが嫌だったからです。

 

そうは言ってもとりあえず見ておきます。ヒロインは膵臓の病気らしく、初見なので当然これが原因で死ぬんだろうなと思いました。

このまま膵臓の病気で終わっても成り立ちます。それで終われば意外性はありませんが死をテーマとしているので十分に内容はあります。

 

しかしその意に反して彼女は誰かも知らない人に殺されます。

見事に罠に引っかかりました。

病気で余命が決まってる、だからその余命を消費するまで死なない。

イコールではないのに自然とそう思ってしまい作者の思い通りにしてやられたことが悔しかったです。

自分ですらそうだったのに作中の彼はどれほどの衝撃だったろうか、彼女は死に際に何を思ったのだろうか、残された人たちはどうなるのだろうか。

結局惹き込まれて最後まで釘付けで視聴し原作小説に手を出す程度にはどハマリしてしましました。

 

内容は面白かったので好きだけど見ると悲しくなるので嫌いな作品です。すっぱいぶどうです。

 

多分遺書のシーンだったと思うけど謎空間で話してたシーンは見ていられませんでした。まどマギのケーキみたいで。

 

彼女が人に殺されるのではなく、病気に殺される未来もあったかもしれません。

もしかしたら死ぬのは彼のほうだったりするかもしれません。

彼にも病気があったかもしれません。

彼女の病気は治ったたかもしれません。

いつか流行った爬虫類の漫画のように人はいつ死んでもおかしくないよ、というテーマもあると思います。

 

何気なく思いついたけど彼が死んでも面白そうだなと思います。

そしたらハッピーエンドかも。

 

  • 小説読んでから思った感想

映画にも原作にもあるシーンについて言うと映像でイメージを共有できるので映画のほうが良いように思いました。キュンキュンするのは映画のほう。

病室でダンスするシーンがめちゃくちゃ好きです。

 

ヒロイン、山内桜良は映画のビジュアルがめちゃくちゃ可愛いと思います。小説表紙よりも現代風な感じはします。

旅行やお出かけで髪型が変わるのは日常とは違うという特別感があっていいと思います。小説ではわかりません。

 

中々名前の出てこない男の子のほうはもっと可愛げがあっても良いんじゃないかなと思いました。無表情なイメージがあります。小説は男の子視点の話なので心情が書いてあるんですけどヒロインに振り回されても迷惑どころか楽しそうな雰囲気が伝わってきました。

 

 

 

 

小説

まず小説のほうが映画よりも優れている点から。

 

物語終盤の山内桜良の遺書は絶対に文字で読むべきです。

前述のとおり映画では雰囲気が自分に合わなかったという理由もありますが他に明確な理由があります。

遺書は普通文字で書かれています。通常声で語られることはありません。

そして書き手の死後に読むことになります。

書いた人は死んでいるからもう話すことはできない。なのに初めて読む新鮮な内容なので不思議とその人が死んだことを忘れてしまいます。作中の彼はそうでした。

書かれている文字を何度も読んだり昔の出来事を思い出したりしているうちにその人が既に死んでいることを自分も忘れました。物語の出来事にもかかわらず、です。

これだけでも読む価値があると思います。共病文庫も同様です。

 

あと単純に男の子の心情が読めるのは大きいです。映画では多くを語らずだったので。

最後の共病文庫を読むシーンとか読むべきです。印象変わります。映画だと泣き声が気になって気持ち悪いなあくらいにしか思いませんでしたから。

 

 

映画から入った人はまず名前の出てこない男の子の呼ばれ方に驚くと思います。それは【秘密を知っているクラスメイト】くんだったり【仲良し】くんと様々な呼ばれ方をします。なぜか、というのはとりあえず考えません。

 

 

以下好きなシーンをダラダラと書きます。

 

  • 自殺用のロープ

初めてデートに行くシーン、ホームセンターに自殺用のロープを買いに行きます。多分映画にはなかったと思います。

逃れられない死が近づく彼女がそんな気もないのに自殺用のロープを買いに行きます。

店員さんに自殺に無難なロープを聞いたり珍しく気の狂った彼女を見ることができます。

彼に会ってから日が経ってないようなので彼に会う前は陽気な彼女も流石に気が病んでたのかなと思ったりします。

 

  • 『真実か挑戦』ゲーム

旅行先のホテルで2人がしたゲーム。王様ゲームみたいなやつ。

アルコールとこのゲームのおかげで2人は短い期間(4/22~8/18)で友達よりも親密になりました。

その後も何度かこのゲームをすることになります。

こういうゲームって使われがちですよね。ハッピーアイスクリーム!とか。

 

  • 怒り

山内桜良の家に遊びに行ったとき、彼が彼女を押し倒したシーン。映画では消化不良でした。

彼女を押し倒したその原因は彼女にからかわれたことによる怒りでした。

それは彼にとって「自分で仕掛けたことの恥ずかしさを振りきるように喋る続ける彼女を標的とした怒り」に見えました。

彼は「侮辱された」と感じ「これが人付き合いだと彼女が言うならば、僕はやはり誰とも関わらずに生きていたい」と思わせたほどでした。

結局彼は冷静になって後悔することになりますが早口で言い訳をする彼女は本当に死ぬ前に異性との思い出を作りたかったのかもしれません。

彼と彼女の関係にとって大きな出来事だったようで共病文庫にも「とても悪くて、良い日だった」と綴られています。

映画と小説で印象が180°変わったシーンでした。

 

  • 生きる

病院を抜け出した彼女とした『真実か挑戦』ゲームで彼がした質問、「君にとって生きるっていうのは、どういうこと?」。

死が近くに決まっている人はそうそういません。しかも2人は高校生。自分、もしくは同級生が死ぬことなんてほとんどの人は経験することがありません。

なので彼女がその答えを見つける難しさをわからない人は多いでしょう。

彼女は意外ながら答えを持っていました。

それは「誰かと心を通わせること」。

まるでずっと一人でいた彼を生きているとは言えないと言っているようでした。

彼女と会うことで彼は生き返ったとも言えます。

一方で彼女自身は自分が誰かがいないと成立しない存在と思っています。だから一人でも生きている彼に憧れました。

一人で生きることが良いことなのか良くないことなのか、彼は後にどちらかを選びました。

 

  • 「もう一度旅行したかったなあ」

 入院が伸びた彼女が何気なく言った言葉。思ったよりも死が近いことを知らされたのかつい口にしてしまいます。

普段おちゃらけてて強い人見えるけどやっぱり死ぬのが怖くて本当は一人で泣いている普通の女の子、そんな儚さが好きです。

余命通りに死ぬのなら海に行ったり練習した手品を見せたりできたのですが。

この台詞であ、死ぬんだと思いました。

このあとも何回か会っていたみたいだけど2人の会話が描かれたのはこのシーンが最後になりました。悲しい。

 

  • とある二人をはち合わせさせるようにしてる。

8月7日の共病文庫から。とある二人とは彼と親友さんのこと。

彼女には先がないので先がある彼のことを気にかけるんだなと思えるシーンです。

小説ではやたらとはち合わせになることが多かったのでお前かよ!と犯人がわかったような気持ちにもなりました。

自分の死後の彼を気にかけているシーンは他にもたくさんあります。

「人に食べてもらうと魂がその人の中で生き続けるっていう信仰も外国にあるらしいよ」

彼は彼女を食べることはありませんでしたが彼女が残したものは彼の未来を変えました。そういう意味では彼女は彼の中で生き続けています。

 

 

  • 恋人にさえならなければ、それでもよかった。

 共病文庫、遺書での彼女の告白。

 「正直に言うとさ、私は何度も、本当に何度も、君に恋をしてるって思ったことがあるの。」

でも彼と彼女の関係は恋人とか友達とか、誰にでもあるありふれたものではなく誰も経験したことのない2人だけのもの。

2人だけがわかってればいい、誰かに伝える必要もない、そんな関係。

彼女が彼に残したかったのは恋人になることじゃなくてもっと別のもの。

だってそれだと死んじゃったら何も残らないし。

 

「もし君が私に恋してたらどうしてたかな、それはちょっと気になります。」